脳の働きによる思春期の必要性と、思春期の教育に関わる面白さ(University of the People教育学勉強メモ)

Univesity of the Peopleの教育学部の、今週の学習テーマは、思春期の脳の働きの理解でした。そこで紹介された資料が非常に面白かったので、そこの内容を翻訳し、要約して紹介します。



Armstrong, T. (2016). The Power of the Adolescent Brain: Strategies for Teaching Middle and High School Students. ASCD.

https://www.weareteachers.com/wp-content/uploads/ASCD-2-Book-Sample-PoweroftheAdolescentBrain.pdf



意思決定や衝動制御など、社会で有効に機能するために必要な脳の領域は、思春期の半ばまでピークに達しません。思春期の子どもたちは、思春期中期(15〜16歳)になると、大人と同じように理性的に物事を考え、判断し、計画を立て、その他の合理的な思考や行動ができるようになります。しかし、それは感情や社会的相互作用、プレッシャーがない状況でのみです。感情が生じたり、個人にとって重要な人が関与したりする状況では、すべてが台無しになってしまいます。


計画の立案、衝動の抑制、意思決定などの実行機能をつかさどる前頭前野は、思春期に最後に調整される脳の領域となります。本能的な情動、意欲、食欲、性欲、睡眠欲などを感情をつかさどる大脳辺縁系は、前頭前野よりも先に成熟します。つまり、思春期後半から20代前半までは、合理的な考え方や行動よりも、感情や感覚を求めたり、社会的な注目を浴びたりすることが優先されることが多いのです。つまり、アクセルである大脳辺縁系の発達は思春期で終了しますが、ブレーキとなる前頭前野は思春期後半から20代まで発達が続きます。思春期は、この2つのシステムの発達時期にずれがあるため、アクセルが車についていても、ブレーキはまだ完全に取り付けられていない時期なのです。


10代の若者は、喜びや報酬を求める神経パターンが、大人や子供とは異なります。青年は小さな報酬ではなく、大きな報酬を求めます。また、10代の若者は、特に仲間がいるときには、大きな報酬のために大きなリスクを負うことをいといません。思春期にはドーパミンに対する脳の感度がピークに達します。ドーパミンは、報酬回路を活性化させたり、学習パターンや意思決定を助けたりする神経伝達物質です。これにより、10代の若者は、学習の早さや報酬に対する異常なまでの感受性、成功や敗北に対する鋭く、時に劇的な反応をすることになります。さらに、思春期にオキシトシンが豊富に存在することで、ティーンエイジャーは他者、特に仲間と一緒にいたり、絆を深めたりすることに価値を置くようになります。そして、気分、食欲、睡眠に関連する神経伝達物質であるセロトニンのレベルが低下するので、孤独感、摂食障害、うつ病、切りつけなどの自傷行為を起こしやすくなります。


思春期の子供たちは、感覚を求め、リスクを冒し、注目を浴びたがり、大人になるまでの間に数え切れないほどの侮辱や傷害を受けやすいということになります。現代でも、この不安定な思春期が遺伝子から排除されずに残っている理由は、思春期の特徴が、10代の若者が社会に貢献するために必要な過程だからです。進化論的に言えば、リスクを取ることは、思春期の子供たちが親の巣から社会に出ていくために必要不可欠な特性です。思春期の子どもたちは、性ホルモンの働きで結婚相手を見つけようとし、種の存続を図ることができますが、この貴重な時期にリスクを取るように設計された脳が組み合わさることで、子どもの頃に過ごした家よりも「外の世界」の方が魅力的でやりがいがあると感じるようになります。


思春期の子供たちが仲間と過ごす時間を増やし、親や権威者(教師を含む)と過ごす時間を減らすことに魅力を感じるのも、進化上の根拠があるからです。思春期の子供たちが大人になってから実際に多くの時間を共に過ごすのは、親や権威者ではなく同世代の人たちです。そのため、10代の脳には、大人になるまでの準備として、友達を探したり、パートナーとつながったり、仲間のグループと親交を深めたりする傾向が組み込まれているのです。


中学・高校の教育者として、私たちは、思春期の若者の不機嫌さ、衝動性、軽率さ、気まぐれな性格に直面する一方で、10代の若者の高揚感、情熱、理想主義、感受性、創造性、他人への思いやりなど、社会の改善に大きく貢献できる資質にも出会えるという事実を評価する必要があります。



そして、筆者は、思春期の脳を教室で最適に機能させるために重要と思われる8つの基本的な介入を紹介しています。

  1. 選択する機会

  2. 自己認識のための活動

  3. 仲間との学習のつながり

  4. 主体的な学習

  5. 体を使った学習

  6. メタ認知戦略

  7. 表現芸術活動

  8. 実社会での経験


参考文献

Armstrong, T. (2016). The Power of the Adolescent Brain: Strategies for Teaching Middle and High School Students. ASCD. https://www.weareteachers.com/wp-content/uploads/ASCD-2-Book-Sample-PoweroftheAdolescentBrain.pdf