2019年10月12日

5回 働くって楽しいことだよ

 私は、この4月からシンガポールで教育アドバイザーとして活動を始めました。この活動を始める際に、多くの方にお力を貸していただきました。その中でも、私を後押ししたのは生徒から聞いたある一言でした。

「働くことって、楽しいんでしょうか。」

 その日は、授業の前に雑談として「最近印象に残ったこと」を聞いていました。当時、中学3年生の女の子が、その質問に対して答えた内容に私は大変驚かされました。簡単にご紹介すると、「日本で、親と一緒に食事をしていました。私たちの周りには、いかにも日本の会社員という人たちが座っていました。その人たちが会話の中で、会社に対する不満や上司の愚痴ばかりを言っていたことに、びっくりしました。社会で働くことって、楽しいんでしょうか。」という内容でした。なぜ驚いたかというと、私もまったく同じことを経験したからです。

「夢をもつ子どもたちを育てたい」

 私が会社員1年目のとき、先輩から非常によく指導していただき、毎日のように夕食に誘っていただきました。大変嬉しかったです。しかし、お酒が進むと、話す内容はいつも会社への不満と、上司への愚痴になっていきました。周りに座った人を見ても、どこも変わりませんでした。私は、大人が自分のやりたいことを我慢して、不満をためながら働いてるこの状況に危機感を覚えました。人生の多くの時間を過ごす働くという行為が、もっと楽しく、有意義なものにすることができたらよいという課題に気づきました。そして、当時出会った本に書いてあった「夢をもつ子どもたちを育てる」という方法で、その課題を解決することに決めて、教員へと転職をしたのでした。

「働くことが楽しいと伝える」

 今回の中学3年生の女の子の言葉は、私が教員になったきっかけと同じでした。この言葉が私の最初の思いを再認識させてくれ、より様々な子どもたちの役に立ちたいと思い、教育アドバイザーになる選択をしたのでした。今後は、子どもたちが社会に出ていくことにワクワクしていけるようにしていきたいと思います。そのために、教育関係のワークショップを開いて、子どもが働いているかっこいい大人の背中を見ることができたり、仕事の内容を聞いて自分の夢を見つけたりする場所を提供していきます。これを読んでいただいた大人の方も、ぜひとも力を貸してください。よろしくお願いします。